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黒字倒産はなぜ起こる?小さな会社の資金繰りの基本と見るべき数字

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税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

「決算では利益が出ているのに、なぜか通帳の残高はいつもギリギリ」。経営者の方から、当事務所でもよくいただくご相談です。利益が出ているのにお金が足りなくなり、最悪の場合は倒産に至る——これがいわゆる「黒字倒産」です。結論からお伝えすると、黒字倒産は「帳簿上の利益」と「手元の現金」がズレることで起こります。この記事では、黒字倒産はなぜ起こるのか、その仕組みと資金繰りの基本、そして経営者が見るべき数字を、税理士がわかりやすく整理して解説します。

黒字倒産とは?黒字なのに倒産する会社が起こる理由をわかりやすく解説

まずは「黒字倒産とは何か」「なぜ黒字なのにお金が足りなくなるのか」を整理します。ここが腹落ちすると、後半の資金繰り対策がぐっと分かりやすくなります。

黒字倒産とは|帳簿の利益と手元の現金は別物

黒字倒産とは、決算書の上では利益(黒字)が出ているにもかかわらず、支払いに必要な現金が足りなくなり、事業が続けられなくなることをいいます。

多くの方が「利益が出ている=お金が貯まっている」とイメージされますが、実際には帳簿上の利益と手元の現金は別物です。利益は「売上から費用を差し引いた計算上の数字」であり、通帳にある現金そのものではありません。この感覚のズレが、黒字倒産の出発点になります。

中小企業を支援する独立行政法人・中小企業基盤整備機構も、黒字倒産を「帳簿上は利益が出ているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足し、倒産してしまうこと」と説明しています。

なぜ黒字なのにお金が足りなくなるのか

黒字なのにお金が足りなくなる最大の理由は、「売上が立つタイミング」と「現金が入ってくるタイミング」がズレるからです。

会計のルールでは、商品を販売したりサービスを提供したりした時点で売上を計上します(発生主義)。ところが、企業どうしの取引では、その場で現金を受け取れるとは限らず、代金の入金は1〜2か月後というのが一般的です。

一方で、仕入代金の支払い、従業員への給与、家賃、借入金の返済などは、入金を待ってくれません。売上として計上したお金がまだ入ってこないのに、支払いだけが先にやってくる。この時間差のあいだに手元の現金が尽きると、黒字でも資金が回らなくなります。

たとえば、100万円の商品を掛けで販売すれば、その瞬間に売上100万円と利益が帳簿に計上されます。しかし現金が入るのは2か月後。その間に仕入先へ60万円を支払う期日が来れば、帳簿は黒字でも手元の現金は減っていきます。

数字で見る現実|休廃業・解散した企業の半数は黒字だった

「黒字なのに会社をたたむ」というのは、決してめずらしい話ではありません。

中小企業庁の「2025年版 中小企業白書」によると、2024年に休廃業・解散した企業のうち、直前期の決算が「黒字」だった企業の割合は51.1%と、過半数を占めています。休廃業・解散は倒産とは異なり自主的な廃業も含みますが、それでも「利益が出ていても事業を続けられない・続けない」会社が半数を超えている点は、経営者が知っておくべき現実です。

なお、同白書では2024年の倒産件数を10,006件、休廃業・解散件数を約7万件としており、そのうち9割超を小規模事業者が占めています。会社の規模が小さいほど、資金繰りの余力は限られます。だからこそ、利益とは別に「お金の流れ」を管理することが欠かせません。

税理士田澤
税理士田澤

「黒字なんだから大丈夫」という思い込みが、実はいちばん危険です。大切なのは、利益が出ているかどうかと、支払いに使える現金があるかどうかを、分けて見る習慣をつけることです。

黒字倒産はなぜ起こる?資金繰りが悪化する典型パターン

黒字倒産はなぜ起こるのか。原因は会社ごとにさまざまですが、資金繰りが悪化するパターンにはいくつかの「型」があります。代表的な4つを見ていきましょう。

パターン①売上の急拡大に運転資金が追いつかない

意外に思われるかもしれませんが、黒字倒産のリスクが高いのは、業績が伸びている「成長期」の会社です。

売上が急に増えると、それに合わせて仕入れや在庫、人員の増強など、先に出ていくお金も一気に増えます。売上の入金は数か月後なのに、仕入や人件費の支払いは先。売上が伸びているからこそ、必要な運転資金が膨らみ、手元の現金が追いつかなくなるのです。

中小機構も、「特に成長期にある会社では、急激な売上げの伸びにともなって売掛金や在庫が膨らむため、帳簿上では黒字にもかかわらず、資金繰りが追い付かずに倒産してしまうことがある」と指摘しています。

パターン②入金より支払いが先行する「サイト負け」

取引先からの入金より、仕入先などへの支払いのほうが先に来てしまう状態を、俗に「サイト負け」と呼びます。

たとえば、売上の回収は「月末締め翌々月払い」なのに、仕入代金の支払いは「月末締め翌月払い」。この場合、支払いが1か月早く発生するため、常に立て替えが必要になります。取引が増えるほど立て替え額も大きくなり、資金繰りを圧迫します。回収と支払いのタイミングのズレは、黒字倒産の代表的な原因のひとつです。

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サイト負けとは?入金より支払いが先に来る会社の資金繰り対策

「支払いは来月末なのに、売上の入金は再来月末」。取引先との決済条件によっては、こうした「お金が入る前に、お金が出ていく」状態が毎月続くことがあります。これが俗にいう「サイト負け」です。サイト負けの状態 ...

パターン③過剰在庫・売れ残りが現金を眠らせる

在庫は、販売されて現金に変わるまでは「お金が形を変えて眠っている状態」です。

必要以上に在庫を抱えると、その分だけ現金が寝てしまい、資金繰りが苦しくなります。さらに売れ残れば、値引き販売や廃棄につながり、損失にもなりかねません。帳簿上は「資産」として計上される在庫も、資金繰りの視点では現金を圧迫する要因になり得るのです。適正な在庫量を保つことは、資金繰り改善の基本といえます。

パターン④過大な設備投資・借入返済の負担

「利益が出たから」と気を大きくして、決算前に高額な設備や車を購入するケースにも注意が必要です。

こうした支出は一度に大きな現金が出ていくうえ、借入で購入すれば毎月の返済も加わります。節税のつもりの支出が、かえって資金繰りを悪化させることは少なくありません。とくに借入金の返済は、経費(損金)にならない元本部分も含めて現金が出ていくため、利益の数字以上にお金を減らします。

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「決算前に利益が出そうだから、車でも買って節税しようか」。決算期が近づくと、経営者からよくいただくご相談です。たしかに4年落ちの中古車を買うと大きな減価償却費を計上でき、その年の利益を圧縮できます。し ...

税理士田澤
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どのパターンにも共通しているのは、「利益」ではなく「現金の出入り」を見落としていることです。自社がどの型に近いかを知るだけでも、対策の優先順位が見えてきます。

経営者が見るべき数字はこれ|利益とお金を分けて管理する

黒字倒産を防ぐには、決算書の利益だけを見ていては足りません。経営者が日ごろから押さえておきたい数字を3つに絞って解説します。

見るべき数字①手元資金と資金繰り表

まず最優先で見るべきは、「今いくら現金があるか」、そして「これから数か月、お金がどう動くか」です。

これを一覧にしたものが「資金繰り表」です。前月からの繰越金に、その月の入金(収入)を足し、支払い(支出)を差し引いて、翌月にいくら現金が残るかを予測します。利益ではなく現金の増減を先読みできるため、資金ショートの兆候を事前につかむことができます。まずは半年先までを目安に作ってみるのがおすすめです。

日本政策金融公庫も、資金繰り表の様式(エクセル)や記入例を公式サイトで無料公開しています。ゼロから作るのが難しければ、こうした公的なひな型を活用すると始めやすいでしょう。

なお、日々の入出金を正確に把握するには、会計ソフトで取引をこまめに記帳しておくことが土台になります。クラウド会計ソフトの選び方は、こちらの記事もあわせてご覧ください。

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見るべき数字②運転資金

運転資金とは、事業を回していくために立て替えておく必要のあるお金のことです。

ざっくりとは、「売上債権(売掛金・受取手形)+在庫-仕入債務(買掛金・支払手形)」で計算します。売掛金と在庫は現金化が先送りされているお金、買掛金は支払いを待ってもらっているお金です。この差額が大きいほど、多くの立て替え資金が必要になります。売上が増えると運転資金も増えるため、成長局面ほどこの数字の動きに注意が必要です。

見るべき数字③損益分岐点

損益分岐点とは、利益がちょうどゼロになる(赤字にも黒字にもならない)売上高のことです。

家賃や人件費などの固定費を、売上からまかなえるかどうかの分かれ目を示します。損益分岐点を把握しておくと、「毎月最低いくら売り上げれば会社が回るのか」が見えるため、値下げや人員増などの判断がしやすくなります。たとえば「社員を1人増やすなら、あといくら売上が必要か」といった検討にも役立ちます。

社員を1人雇うなら売上はいくら必要かを損益分岐点で計算する記事のアイキャッチ(法人・経営者の方へ)
社員を1人雇うなら売上はいくら必要?損益分岐点で計算する目安

社員を1人雇うなら売上はいくら必要?月給25万円の社員の年間コストは給与+法定福利費(給与の約16%)で約350万円。損益分岐点の考え方を使い、粗利率80%・50%・30%別に必要な売上を税理士が試算します。雇う前の資金繰りチェックも解説。

また、会社全体の財政状態をつかむには、貸借対照表(BS)から手元資金や借入のバランスを読み取ることも有効です。

経営者のための貸借対照表(BS)の読み方・まず見るべき3つの数字を解説する記事のアイキャッチ(法人・経営者の方へ)
経営者のための貸借対照表(BS)の読み方|まず見るべき3つの数字

経営者のための貸借対照表(BS)の読み方を税理士が解説。まず見るべきは純資産(債務超過チェック)・自己資本比率・現預金と流動比率の3つだけ。損益計算書との違い、「利益が出てもお金がない」理由、同業比較の無料ツールまで中小企業向けにわかりやすく紹介します。

税理士田澤
税理士田澤

3つの数字は、どれも難しい専門知識がなくても追える指標です。毎月「現金・運転資金・損益分岐点」を確認する習慣が、黒字倒産を遠ざける一番の近道になります。

黒字倒産を防ぐ資金繰り改善の基本|今日からできる対策

黒字倒産の仕組みと見るべき数字がわかったら、次は具体的な対策です。中小機構が挙げる回避策を軸に、今日から取り組める4つのポイントを整理します。

資金繰り表で入出金を「見える化」する

最初の一歩は、これまで見てきた資金繰り表で、お金の出入りを「見える化」することです。

「いつ・いくら入るのか」「いつ・いくら払うのか」を書き出すだけで、資金が不足しそうな月を前もって把握できます。資金ショートは、直前に気づくほど打てる手が限られます。早めに気づけば、入金を早める交渉や、支払いの調整、融資の準備といった選択肢が持てるのです。中小機構も、資金繰り表による入出金状況の把握を回避策の第一に挙げています。

予算と実績を毎月見比べて早めに軌道修正する方法は、予実管理のやり方でくわしく解説しています。

予実管理のやり方と毎月の予算と実績を比較して経営を軌道修正する方法を解説する記事のアイキャッチ
予実管理のやり方|毎月の予算と実績を比較して経営を軌道修正する方法

「決算書を見たら、思っていたより利益が出ていなかった」。年に一度の決算で、はじめて自社の成績を知って驚く経営者は少なくありません。ですが、決算が終わってから業績を知っても、打てる手はほとんど残っていま ...

回収サイトは短く、支払サイトは長く

資金繰りを楽にする基本は、「入ってくるお金は早く、出ていくお金は遅く」です。

具体的には、販売代金はできるだけ短い期間で回収し、仕入代金の支払いはできるだけ長い期間に設定します。前受金や着手金をもらう、支払いを後払いや分割にしてもらうなど、取引条件を見直せないか検討してみましょう。起業して間もない会社は信用力の面で交渉が難しい面もありますが、条件を少し変えるだけでも資金繰りは大きく改善します。

資金調達の選択肢を事前に確保する

資金が足りなくなってから慌てて借入を申し込んでも、審査に時間がかかり間に合わないことがあります。

資金は「必要になる前」に準備しておくのが鉄則です。日ごろから取引金融機関に決算書や試算表を提供して信頼関係を築いておく、複数の金融機関と付き合って調達先を分散しておく、といった備えが有効です。金融機関は決算書をもとに会社を評価(格付け)して融資の可否を判断するため、日ごろの数字づくりも大切になります。

銀行融資の格付け(債務者区分)の仕組みと借りられる会社の決算書の違いを解説する記事のアイキャッチ
銀行融資の「格付け」の仕組み|借りられる会社とそうでない会社の決算書の違い

「同じくらいの規模なのに、あの会社は銀行がすぐお金を貸してくれる。うちはなかなか通らない」。その違いの背景には、銀行が社内で行っている「格付け」があります。銀行は融資先の会社を決算書などから評価してラ ...

「利益は出ているのにお金がない」と感じたら早めに専門家へ

「黒字なのに資金繰りが苦しい」という感覚は、黒字倒産の初期サインです。

こうした違和感があるときは、早めに税理士など専門家に相談することをおすすめします。資金繰り表の作成や運転資金の見直し、金融機関への提出資料づくりなど、専門家と一緒に取り組める部分は少なくありません。とくに法人の場合は、役員報酬の設定や納税資金の準備も資金繰りに直結します。個人事業から法人化を検討している段階の方は、こちらの記事もあわせて確認しておくと、設立後のお金の流れをイメージしやすくなります。

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法人成りのタイミングはいつがベスト?所得・売上・消費税インボイス・社会保険の4つの目安から、個人事業主が法人化すべきかの判断基準を税理士がわかりやすく解説。マイクロ法人のデメリットも紹介します。

税理士田澤
税理士田澤

資金繰りは「苦しくなってから」より「余裕のあるうち」に整えるほうが、はるかに選べる手が多くなります。数字を見える化して、早め早めに動くことが、会社を守る一番の対策です。

まとめ|黒字倒産はなぜ起こるかを知り、資金繰りを見える化しよう

黒字倒産はなぜ起こるのか、その仕組みと対策を振り返ります。

この記事のまとめ

  • 黒字倒産とは、帳簿は黒字でも支払いに使える現金が足りず倒産すること
  • 原因は「売上が立つタイミング」と「現金が入るタイミング」のズレ
  • 休廃業・解散した企業の51.1%は直前期が黒字(2025年版 中小企業白書)
  • 資金繰り悪化の型は、急拡大・サイト負け・過剰在庫・過大投資の4つ
  • 経営者が見るべきは「手元資金と資金繰り表・運転資金・損益分岐点」
  • 対策の基本は、資金繰り表での見える化と、回収を早く・支払いを遅く

利益が出ていることと、会社にお金が回っていることは、別の話です。決算書の黒字だけで安心せず、現金の流れをつかむことが、黒字倒産を防ぐ何よりの近道になります。

税理士田澤
税理士田澤

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青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

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