「アパートを建てると相続税が下がる」という話を聞いたことがある方は多いと思います。ところが令和8年度税制改正で、この考え方の前提が変わることになりました。貸付用不動産の相続税評価に、いわゆる「5年ルール」が導入されるためです。あわせて、教育資金の一括贈与の非課税措置も令和8年3月31日で新規の受付が終わりました。
この記事では、今後の相続税対策がどう変わるのかを、財務省「令和8年度税制改正の大綱」と国税庁の情報をもとに、青森市の税理士が整理します。なお本記事は2026年8月時点の情報です。
令和8年度税制改正で今後の相続税対策はどう変わるのか|2026年8月時点の全体像

まずは全体像からです。令和8年度税制改正のうち、今後の相続税対策に関係するのは大きく2つです。「何が変わって、何が変わっていないのか」を最初に切り分けておくと、あとの判断がぶれません。
今後の相続税対策で変わるのは「貸付用不動産の評価」と「教育資金の一括贈与」
令和8年度税制改正の資産課税で、相続税対策に直接関係するのは次の内容です。あわせて「変わっていないもの」も並べて整理します。
| 項目 | 令和8年度税制改正での扱い | 適用時期 |
|---|---|---|
| 貸付用不動産の相続税評価 | 課税時期前5年以内に取得・新築したものは通常の取引価額で評価 | 令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価 |
| 不動産小口化商品(不動産特定共同事業契約・信託受益権)の評価 | 取得の時期にかかわらず通常の取引価額で評価 | 令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価 |
| 教育資金の一括贈与の非課税措置 | 信託等が可能な期間を延長せずに終了 | 令和8年3月31日後の信託受益権等の取得等から |
| 暦年課税の基礎控除110万円 | 変更なし | ー |
| 相続時精算課税の基礎控除110万円 | 変更なし | ー |
| 生前贈与加算7年(令和5年度改正) | 変更なし | 令和6年1月1日以後の贈与から |
出典: 財務省「令和8年度税制改正の大綱(2/9)資産課税」
暦年課税と相続時精算課税は令和8年度税制改正では変わっていない
「贈与のルールがまた変わるらしい」という話を耳にされた方もいるかもしれません。ただ、令和8年度税制改正で、暦年課税の年110万円の基礎控除も、相続時精算課税の年110万円の基礎控除も、仕組みそのものは変わっていません。
よく話題になる「生前贈与加算が7年に延びた」という改正は、令和5年度税制改正で決まったもので、令和6年1月1日以後の贈与から順次適用されているものです。今回の令和8年度税制改正で新たに延長されたわけではありません。ここを混同すると、必要のない駆け込み贈与に走ってしまいます。
今後の相続税対策の分岐点は「令和9年1月1日以後の相続等」
貸付用不動産の評価の見直しは、大綱で「令和9年1月1日以後に相続等により取得をする財産の評価に適用する」とされています。つまり相続や遺贈が令和9年1月1日以後に発生するかどうかが分岐点になります。
令和8年度税制改正の全体像は、立場別に次の記事でまとめています。相続税以外の改正もあわせて確認したい方はこちらもご覧ください。
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令和8年度税制改正をわかりやすく解説|個人事業主・会社員・経営者が押さえるべき11のポイントまとめ【2026年版】
2026年から、私たちの暮らしや仕事に関わる税金のルールが大きく変わります。 物価高に対応した減税もあれば、これまでの「当たり前」がガラッと変わる制度もあります。2027年1月から新しく生まれる税金も ...
「改正」と聞くとすべてが変わるように感じますが、実際に動いたのは限られた範囲です。まずは変わらない部分を確認しておくと、落ち着いて考えられます。
貸付用不動産の相続税評価はどう変わる?令和9年1月からの「5年ルール」とは

ここからが本題です。今回の令和8年度税制改正で、今後の相続税対策にもっとも大きく影響するのが、貸付用不動産の評価方法の見直しです。
課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産は「通常の取引価額」で評価
財務省「令和8年度税制改正の大綱」では、相続税等の財産評価の適正化として、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築をした一定の貸付用不動産については、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するとされています。
課税時期とは、相続税であれば相続が開始した日(被相続人が亡くなった日)のことです。つまり、亡くなった日からさかのぼって5年以内に買ったり建てたりした賃貸物件は、路線価や固定資産税評価額をベースにした評価ではなく、実際の取引価額に近い金額で評価される、という組み立てになります。
出典: 財務省「令和8年度税制改正の大綱(2/9)資産課税」
取得価額をもとに計算した価額の80%で評価できる簡便な方法も示されている
「通常の取引価額」といっても、相続のたびに不動産鑑定を取るのは現実的ではありません。この点について大綱では、通常の取引価額に相当する金額は、課税上の弊害がない限り、被相続人等が取得等をした貸付用不動産に係る取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の100分の80に相当する金額によって評価することができる、とされています。
ただし、これは「課税上の弊害がない限り」という条件付きの取扱いです。どのような場合が課税上の弊害にあたるのか、地価の変動等をどう考慮するのかといった具体的な内容は、大綱の記述だけでは分かりません。
| 区分 | 現行の評価(令和8年12月31日までの相続等) | 見直し後(令和9年1月1日以後の相続等) |
|---|---|---|
| 課税時期前5年以内に取得・新築した貸家 | 固定資産税評価額から借家権割合等を控除した価額 | 通常の取引価額に相当する金額(取得価額を基に計算した価額の80%によることも可) |
| 課税時期前5年以内に取得した貸家建付地 | 路線価等による自用地価額から借地権割合・借家権割合等を控除した価額 | 通常の取引価額に相当する金額(同上) |
| 課税時期前5年より前から保有している貸付用不動産 | 現行の評価方法 | 見直しの対象として大綱に示されていない |
2026年8月時点で、具体的な評価方法を定める通達は公表されていない
ここは慎重にお伝えしたい点です。令和8年度税制改正を盛り込んだ「所得税法等の一部を改正する法律」は令和8年3月31日に成立・公布されていますが、財務省が公表している「令和8年度 税制改正の解説」のうち租税特別措置法等(相続税・贈与税関係)の改正で扱われているのは、国等に対して相続財産を贈与した場合等の非課税、教育資金の一括贈与の非課税措置の新規適用停止、非上場株式等の納税猶予、適用期限の延長の4項目です。貸付用不動産の評価の見直しはここに含まれていません。
つまりこの見直しは、法律ではなく財産評価に関する通達の側で手当てされるものと考えられます。そして2026年8月時点で、具体的な評価方法を定める通達は国税庁から公表されていません。大綱にある「一定の貸付用不動産」の「一定の」がどの範囲を指すのかも、現時点では明らかにされていません。
したがって、いま断定的な税額シミュレーションを前提に大きな意思決定をするのは避けたほうが安全です。通達が公表された段階で、あらためて手元の物件に当てはめて確認する必要があります。
「決まったこと」と「これから決まること」を分けてお伝えするようにしています。速報だけを見て動くと、あとで前提が変わったときに戻せなくなることがあります。
貸付用不動産の評価見直しが今後の相続税対策に与える影響|5年より前の保有はどうなる
前の章の内容を、実際の相続税対策の文脈に置き換えて考えます。何が起きるのかが分かると、自分の状況に当てはめやすくなります。
相続税評価額と取引価額の差を利用してきたのが従来の相続税対策
これまで、賃貸アパートや賃貸マンションが相続税対策として語られてきたのは、評価のルールに理由があります。建物は固定資産税評価額をもとに評価し、そこから借家権割合に相当する部分を差し引きます。土地も路線価等による評価額から、借地権割合と借家権割合に対応する部分を差し引いた貸家建付地として評価します。
その結果、実際に売買される価格よりも相続税の評価額が低くなる傾向があり、この「取引価額と相続税評価額の差」が相続税の圧縮につながっていたというのが、従来の仕組みです。今回の見直しは、この差そのものに手を入れるものといえます。
影響が大きいのは「相続の直前に取得した収益物件」
見直しの対象は「課税時期前5年以内」に取得・新築したものです。裏を返せば、相続開始が近いタイミングで取得した貸付用不動産ほど、影響を受けやすいということになります。
高齢になってから相続税対策として賃貸物件を購入する、という進め方は、令和9年1月1日以後の相続では従来と同じ効果を見込めない可能性があります。
課税時期前5年より前から保有している貸付用不動産は対象として示されていない
一方で、大綱が対象としているのは「課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得又は新築をした」貸付用不動産です。長く保有してきた物件や、対価を伴わずに取得したもの(相続で引き継いだ物件など)は、この文言からは対象外と読めます。
ただし前章のとおり、「一定の貸付用不動産」の具体的な範囲は通達等を待つ必要があります。現時点では「5年より前から持っているものは今までどおりの可能性が高い」という程度の理解にとどめ、断定は避けるのが適切です。
なお、貸付用の宅地について小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等)を使えるかどうかは、評価方法とは別の論点です。特例の要件は次の記事で解説しています。
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「うちの物件はいつ買ったか」を確認するだけでも、影響の大きさがかなり見えてきます。まずは取得時期の棚卸しからです。
不動産小口化商品は取得から5年に関係なく相続税評価が見直される
今回の見直しには、もうひとつ押さえておきたい内容があります。いわゆる不動産小口化商品の扱いです。
不動産特定共同事業契約に基づく権利が対象になる
大綱では、不動産特定共同事業契約に基づく権利の目的となっている貸付用不動産について、評価方法の見直しが示されています。不動産特定共同事業とは、事業者が複数の投資家から出資を受けて不動産を取得・運用し、その収益を分配する仕組みです。
信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものも対象になる
同じく、信託受益権に係る金融商品取引契約のうち一定のものに基づく権利の目的となっている貸付用不動産も、見直しの対象とされています。
「その取得の時期にかかわらず」通常の取引価額で評価される
これらについて大綱は、その取得の時期にかかわらず、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するとしています。前章の5年ルールと違い、取得から何年経っていても対象になるという点が大きな違いです。
相続税対策として不動産小口化商品を保有している場合、令和9年1月1日以後の相続では、保有期間の長さにかかわらず評価が変わることになります。
出典: 財務省「令和8年度税制改正の大綱(2/9)資産課税」
不動産小口化商品は「少額から始められる相続税対策」として案内されることがあります。保有されている方は、この改正を前提に見直しておきたいところです。
令和8年3月31日で終了した教育資金の一括贈与|今後の相続税対策への影響
もうひとつの改正が、教育資金の一括贈与の非課税措置の終了です。生前贈与を使った相続税対策を考えている方には、直接影響します。
新規の信託等は令和8年3月31日で終了した
大綱では、直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、令和8年3月31日までとされている教育資金管理契約に基づく信託等可能期間を延長せずに終了することとされました。財務省の「令和8年度 税制改正の解説」でも、この項目は「新規適用停止」として整理され、令和8年3月31日後に信託受益権等の取得等をした場合には、この特例は適用されないとされています。
この制度は、受贈者1人につき1,500万円までの教育資金を非課税で一括贈与できる仕組みで、受贈者は30歳未満であることが要件でした。まとまった金額を一度に贈与できるため、相続税対策としてよく使われてきた制度です。
出典: 国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税」
すでに拠出した教育資金は引き続き非課税措置の対象になる
すでに教育資金管理契約を結んで資金を拠出している方は、あわてる必要はありません。大綱では、令和8年3月31日までに拠出された金銭等については引き続き本措置を適用できることとする、とされています。
| 時期 | 新規の信託等(拠出) | すでに拠出済みの資金 |
|---|---|---|
| 令和8年3月31日まで | 可能 | 非課税措置の対象 |
| 令和8年4月1日以後 | できない(新規適用停止) | 引き続き非課税措置の対象 |
契約期間中に贈与者が亡くなったときの管理残額に注意する
見落とされやすいのがこの点です。教育資金管理契約の期間中に贈与者(祖父母や父母)が亡くなった場合、使い残した管理残額に相続税がかかることがあります。「贈与したから相続財産から外れた」と考えていると、想定外の相続税につながります。
すでに口座がある方は、残高と受贈者の年齢(30歳到達で契約終了となる点)をあわせて確認しておきましょう。生前贈与そのものの進め方は、次の記事で詳しく解説しています。
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青森で生前贈与の相談をするなら|暦年贈与・相続時精算課税の選び方と5つの失敗例【税理士解説】
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教育資金の一括贈与は「入口が閉じた」だけで、既存の口座が無効になったわけではありません。ただ、出口の扱いは意外と複雑です。
生前贈与の駆け込みは今後の相続税対策として有効か|3つの判断軸

「制度が変わる前に贈与しておいたほうがいいのでは」というご相談が増えています。ただ、駆け込みが有効かどうかは状況によります。判断の軸を3つに整理します。
判断軸①|暦年課税の生前贈与加算は7年(令和6年1月1日以後の贈与)
相続や遺贈で財産を取得した人が、被相続人から生前に贈与を受けていた場合、その贈与財産は相続税の課税価格に加算されます。国税庁によると、令和6年1月1日以後の暦年課税に係る贈与により取得した財産については、その加算対象期間が相続開始前7年以内となります。
ただし、いきなり7年になるわけではなく、相続開始の日によって加算対象期間が変わります。
| 相続開始の日 | 加算対象期間 |
|---|---|
| 〜令和8年12月31日 | 相続開始前3年以内 |
| 令和9年1月1日〜令和12年12月31日 | 令和6年1月1日から死亡の日までの間 |
| 令和13年1月1日〜 | 相続開始前7年以内 |
また、相続開始の日が令和9年1月2日以後の場合には、加算対象期間内に取得した財産のうち相続開始前3年以内に取得した財産以外の財産については、その財産の贈与時の価額の合計額から総額100万円までは相続税の課税価格に加算されません。
つまり、暦年課税で駆け込み贈与をしても、相続開始が近ければ加算されて元に戻ってしまいます。暦年課税の贈与は「早く始めて長く続ける」ほど効果が出る仕組みで、駆け込みには向きません。
出典: 国税庁「No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」
判断軸②|相続時精算課税の年110万円は相続財産に加算されない
一方、相続時精算課税には別の考え方があります。国税庁によると、令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を相続税の課税価格に加算します。
言い換えると、年110万円の基礎控除の範囲内で贈与した部分は、相続税の課税価格に加算されないということです。相続開始が近い方にとっては、暦年課税より使いやすい場面があります。
ただし、相続時精算課税は一度選択すると、その贈与者からの贈与について暦年課税に戻すことはできません。贈与者は原則60歳以上、受贈者は18歳以上といった要件もあります。「とりあえず選んでおく」という判断はおすすめできません。
判断軸③|金額を急に増やすと贈与税の負担が跳ね上がる
3つ目は、贈与税そのものの負担です。暦年課税では、1年間に贈与を受けた財産の合計額から基礎控除額110万円を差し引いて計算します。基礎控除を超える部分には累進税率がかかるため、駆け込みで金額を大きくすると、節約できる相続税より贈与税のほうが大きくなることもあります。
なお、直系尊属から18歳以上の子や孫への贈与には特例税率が使えますが、兄弟間の贈与や夫婦間の贈与などは一般税率です。誰から誰への贈与かで税率が変わる点にも注意が必要です。
贈与の形が整っていないと、そもそも贈与として認められないこともあります。名義預金の考え方は次の記事で解説しています。
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名義預金とは、通帳や口座の名義は家族でも、実際には被相続人が管理・支配していた預金のことです。相続税の申告では見落とされやすい一方で、税務調査で指摘されやすい論点のひとつでもあります。 「子や孫の名義 ...
出典: 国税庁「No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)」
「急ぐべきか」より「どの制度を選ぶか」のほうが結果に効きます。ご家族の年齢と財産の内訳が分かれば、方向性はかなり絞り込めます。
今後の相続税対策で慌てて動くと失敗しやすい3つのケース
改正の話題が出ると、動くこと自体が目的になってしまうことがあります。実務でよく見かける失敗のパターンを3つ挙げます。
①「令和8年中に買えば逃げ切れる」と考えて収益性の低い物件を取得してしまう
いちばん誤解が多いのがここです。5年ルールは、令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産の評価に適用されます。令和8年中に取得しても、相続が令和9年1月1日以後に発生し、その時点で取得から5年以内であれば、見直し後の評価の対象になります。
つまり「令和8年中に購入すれば従来の評価が使える」わけではありません。駆け込みで収益性や立地を十分に検討しないまま物件を取得すると、相続税の効果も得られず、賃貸経営の負担だけが残ります。
②名義預金のまま「贈与したつもり」になっている
家族名義の口座にお金を移しただけで、通帳や印鑑を親が管理しているようなケースでは、贈与が成立していないと判断されることがあります。この場合、その預金は被相続人の財産として相続税の課税対象になります。
駆け込みで金額を動かすほど、この形になりやすい点には注意が必要です。
③小規模宅地等の特例や二次相続を考えずに分けてしまう
目の前の相続税だけを見て遺産分割を決めると、配偶者が亡くなったときの二次相続で負担が大きくなることがあります。特例の適用要件や、次の相続まで含めた総額で考えることが大切です。
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二次相続の相続税対策|一次相続から考える負担の抑え方
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「改正前に何かしなければ」という焦りが、いちばんの落とし穴です。制度に合わせて動くのではなく、ご家族の事情から逆算して考えましょう。
2026年のうちにやっておきたい今後の相続税対策|税理士の視点
最後に、2026年8月時点で現実的にできる準備を整理します。どれも通達の内容が確定していなくても進められることです。
保有する貸付用不動産の「取得時期」を棚卸しする
まずは、お持ちの賃貸物件について、いつ取得または新築したのかを一覧にしておきます。5年という期間が判定の軸になるため、取得時期が分かっているだけで、影響の有無をおおまかに見積もれます。売買契約書や建築請負契約書、登記事項証明書を手元にまとめておくとスムーズです。
不動産小口化商品を保有している場合は、取得時期にかかわらず対象となるため、あわせてリストに入れておきましょう。
贈与の記録(贈与契約書・振込履歴)を整えておく
すでに生前贈与を進めている方は、贈与契約書と銀行振込の履歴が残っているかを確認します。贈与の事実を後から説明できる状態にしておくことが、いちばん確実な備えです。
通達等で明らかになっていない部分は最新情報を確認する
繰り返しになりますが、貸付用不動産の具体的な評価方法を定める通達は、2026年8月時点で公表されていません。「一定の貸付用不動産」の範囲や、取得価額を基に計算した価額の80%で評価できる場合の条件は、今後の公表内容を確認する必要があります。本記事の内容も、通達等が公表された時点で見直しが必要になる可能性があります。
相続税の申告そのものを自分で進められるかどうかの判断基準は、次の記事にまとめています。
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相続税の申告は、税理士に依頼しなくても自分で行うことができます。ただし、不動産が複数あったり、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例を使ったりする場合は、判断ミスが多額の追徴税額につながることもあります ...
当事務所では、青森市近郊の方はもちろん、オンラインで全国の方の相続税のご相談に対応しています。「うちの物件は影響があるのか」という段階のご相談も歓迎です。
まとめ|今後の相続税対策は「令和9年1月1日」から逆算して考える
令和8年度税制改正で今後の相続税対策に影響するのは、貸付用不動産の相続税評価の見直しと、教育資金の一括贈与の終了の2つです。前者は課税時期前5年以内に取得・新築した貸付用不動産を通常の取引価額で評価するもので、令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産から適用されます。不動産小口化商品は取得時期にかかわらず対象です。一方、暦年課税と相続時精算課税の仕組みは変わっておらず、生前贈与の駆け込みが有効かどうかは、加算対象期間と制度の選択によって結論が変わります。そして貸付用不動産の具体的な評価方法を定める通達は、2026年8月時点でまだ公表されていません。断定的な情報で急いで動くのではなく、保有不動産の取得時期の棚卸しと贈与の記録の整理から始めるのが、いま確実にできる相続税対策です。
相続税や贈与税はケースによって大きく変わります。ご自身で判断が難しい場合は、早めに専門家へご相談ください。
青森市で相続税・贈与税のご相談をご希望の方は、当事務所のサービス内容・料金をご確認ください。
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