106万円の壁の撤廃で消えるのは賃金要件だけであることと、残る要件・企業規模要件のスケジュールをまとめた記事のアイキャッチ画像

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106万円の壁はいつ撤廃?消えるのは賃金要件だけ・週20時間は残る

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税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

「106万円の壁がなくなる」という話を耳にして、パートの方の働き方や、雇う側の社会保険料がどうなるのか気になっている方も多いと思います。

結論から言うと、撤廃されるのは加入要件のうち「所定内賃金が月額8.8万円以上」という賃金要件だけです。週20時間以上という労働時間要件も、学生を対象外とする扱いも、これまでどおり残ります。「壁がなくなって誰でも加入する」わけではありません。

この記事では、厚生労働省が公表している内容だけをもとに、何が消えて何が残るのか、企業規模要件はいつどこまで下がるのかを整理します。

106万円の壁とは?撤廃されるのは賃金要件だけ

いわゆる「106万円の壁」は、パート・アルバイトの方が厚生年金保険・健康保険に加入するかどうかの分かれ目のひとつです。

厚生労働省の説明では、従業員50人超の企業に週20時間以上で勤務する場合、所定内賃金が月額8.8万円以上(年収換算で約106万円)になると厚生年金保険等に加入することになります。この月額8.8万円という基準が「賃金要件」で、年収に換算した約106万円という数字が「106万円の壁」と呼ばれてきました。

撤廃の理由は最低賃金の引上げ

令和7(2025)年の年金制度改正法により、この賃金要件は最低賃金の状況を踏まえ、令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃されることとなりました。厚生労働省は、令和8(2026)年10月に撤廃予定と案内しています。

最低賃金が上がったことで、週20時間働けば月額8.8万円を超えるケースがほとんどになり、賃金要件が実質的に機能しなくなったという背景があります。

「壁を気にせず働けるようになる」という趣旨

厚生労働省は、人手不足への対応が急務となる中で、短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働くことができる環境づくりを支援する、という位置づけでこの見直しを進めています。就業調整をしなくてよくなる一方で、加入対象になる方が増えるということでもあります。

税理士田澤
税理士田澤

「106万円の壁が消える」と聞くと全部なくなるように感じますが、消えるのは月8.8万円という金額の線引きだけです。ここを取り違えると、シフトの組み方を間違えます。

106万円の壁の撤廃後も残る3つの要件|週20時間・2か月超・学生除外

賃金要件が撤廃されても、短時間労働者が加入対象になるかどうかは、残りの要件で判断されます。

要件2026年9月まで2026年10月以後
賃金要件所定内賃金が月額8.8万円以上撤廃予定
労働時間要件週の所定労働時間が20時間以上変わらず残る
雇用期間2か月を超える雇用の見込み変わらず残る
学生対象外対象外(変わらず残る)
企業規模要件従業員51人以上当面は51人以上のまま

厚生労働省の資料でも、被用者保険の適用拡大により加入要件は週の勤務が20時間以上というシンプルなものになる、と説明されています。逆に言えば、週20時間未満で働いている方は、賃金要件が撤廃されても加入対象にはなりません。

学生についても、被用者保険の加入対象外であることが明記されています。学生アルバイトの方の扱いは、この改正では変わりません。

税理士田澤
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実務でいちばん影響が出るのは「週20時間ぎりぎりで、月8.8万円未満」だった方です。これまで対象外だった層が加入対象に入ってきます。

106万円の壁の撤廃はいつから?企業規模要件の段階スケジュール

もうひとつの大きな変更が、企業規模要件です。こちらは一度に撤廃されるのではなく、10年かけて段階的に下がります。

2027年10月から2035年10月までの4段階

厚生労働省が公表している図では、次のように案内されています。

時期対象になる企業の規模
2027年10月から36人以上の企業
2029年10月から21人以上の企業
2032年10月から11人以上の企業
2035年10月から10人以下の企業

51人以上の企業という企業規模要件は、10年かけて段階的に対象の企業を拡大し、最終的に撤廃することで、働く企業の規模にかかわらず加入することになる、と説明されています。

2027年9月までは51人以上のまま

ここは誤解が生まれやすいところです。2026年10月に賃金要件が撤廃されても、企業規模要件は当面そのままです。最初の引下げは2027年10月なので、それまでは従業員51人以上の企業に勤務する短時間労働者が対象、という枠組みは変わりません。

「従業員数」の数え方は厚生年金保険の被保険者数

もうひとつ注意したいのが人数の数え方です。厚生労働省の説明では、「従業員数」は企業の「厚生年金保険の適用対象者数(被保険者数)」で判断するとされています。パート・アルバイトを含めた在籍者の総数ではありません。

税理士田澤
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自社が次にどの段階で対象になるかは、被保険者数を数えれば見当がつきます。10人前後の会社でも、2032年10月には視野に入ってきます。

106万円の壁が撤廃されても130万円の壁は残る

106万円の壁と130万円の壁は別の制度です。106万円の壁の撤廃で130万円の壁がなくなるわけではありません。

厚生労働省の説明では、従業員50人超の企業に週20時間以上で勤務する場合以外は、130万円の壁を超えると国民年金・国民健康保険に加入することになる、と整理されています。勤務先の規模や労働時間の条件で被用者保険に入れない方は、130万円を超えた時点でご自身で国民年金・国民健康保険に加入する、という構図です。

19歳以上23歳未満は150万円未満に引き上げられた

130万円の壁の側でも見直しが行われています。所得税法上の特定扶養控除の要件の見直し等が行われたことを踏まえ、扶養認定を受ける方(配偶者を除く)が19歳以上23歳未満である場合の年間収入要件の額が150万円未満に引き上げられました。

大学生のお子さんを扶養している方にとっては、130万円ではなく150万円が基準になります。

一時的に130万円を超えたときの事業主の証明

人手不足による労働時間延長等に伴い一時的に年収が130万円以上となった場合には、過去の課税証明書、給与明細書、雇用契約書などに加え、一時的な収入である旨の事業主の証明を添付することで、原則として連続2回までは引き続き扶養に入り続けることが可能とされています。

繁忙期の残業で一時的に超えてしまった、というケースの受け皿です。恒常的に超える見込みの場合は対象になりません。

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税理士田澤
税理士田澤

「106万円がなくなるなら130万円も気にしなくていい」という質問をよく受けますが、別物です。どちらの話をしているのかを、まず切り分けてください。

106万円の壁の撤廃で雇う側が確認する4つのこと

雇う側から見ると、加入対象になる方が増える分、社会保険料の事業主負担(法定福利費)が増えます。撤廃前に整理しておきたい点をまとめます。

対象になる人数の洗い出し

週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でない、という条件に当てはまる方のうち、これまで月額8.8万円未満だったために対象外だった方が何人いるかを数えます。ここが増加分の母数になります。

法定福利費の試算

保険料率は年度・都道府県・加入している健康保険(協会けんぽか健康保険組合か)によって異なるため、目安の金額をここで示すことはできません。ご自身の事業所に適用される料率で試算してください。人数が多い事業所ほど、資金繰りへの影響は先に見ておいたほうが安全です。

本人への説明とシフトの相談

加入すると本人の手取りは一時的に減りますが、将来の年金額が増え、傷病手当金や出産手当金といった給付も受けられるようになります。厚生労働省も、被用者保険に加入することのメリットを特設サイトで案内しています。説明なしにシフトだけ調整すると、トラブルのもとになります。

助成金の確認

厚生労働省は、労働者を新たに被用者保険に適用させるとともに、収入増加の取組を行った事業主に助成を行う「短時間労働者労働時間延長支援コース」を新設しています。従来の「社会保険適用時処遇改善コース」は、令和8年3月31日までに取組を行った事業主が対象とされており、令和8年4月1日以降に取組を予定している場合は新しいコースを利用する案内が出ています。

要件や申請手続は厚生労働省のリーフレットで確認してください。

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税理士田澤
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人数と料率さえ分かれば、増加額は計算できます。10月が近づいてから慌てるより、今のうちに数字を出しておくと判断が楽になります。

106万円の壁の撤廃への備えまとめ

106万円の壁の撤廃で消えるのは、所定内賃金が月額8.8万円以上という賃金要件だけです。週20時間以上、2か月を超える雇用の見込み、学生でないこと、という要件はこれまでどおり残ります。

厚生労働省は、この賃金要件について令和8(2026)年10月に撤廃予定と案内しています。法律上は令和7(2025)年6月から3年以内に撤廃と定められているため、「予定」という前提で準備を進めてください。

企業規模要件は2027年10月の36人以上から始まり、2029年10月に21人以上、2032年10月に11人以上、2035年10月に10人以下と、10年かけて段階的に下がります。2027年9月までは51人以上のままです。

130万円の壁は別制度として残ります。ただし19歳以上23歳未満の被扶養者については、年間収入要件が150万円未満に引き上げられています。

雇う側は、対象になる人数の洗い出しと法定福利費の試算を先に済ませ、本人への説明とあわせて準備しておくと、施行時に慌てずに済みます。

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