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iDeCoは一時金と年金どちらが有利?退職所得控除・公的年金等控除の計算例で比較【個人事業主・2026年】

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税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

iDeCo(個人型確定拠出年金)は、60歳以降に「一時金」「年金」「一時金と年金の併用」のいずれかで受け取ります。一時金には退職所得控除、年金には公的年金等控除という別々の控除が使われるため、同じ金額を受け取っても、受け取り方しだいで課税される所得の額が大きく変わります。

この記事では、個人事業主の方が「一時金と年金のどちらで受け取るか」を判断できるように、同じ1,000万円を受け取る3パターン(一時金・年金・併用)の計算例を、国税庁の速算表どおりに並べて比較します。あわせて、多くの個人事業主が加入している小規模企業共済の共済金を近い時期に受け取る場合に、退職所得控除の枠がどう重なるのかも整理します。

制度の全体像や小規模企業共済との比較は、ハブ記事「個人事業主のiDeCo出口戦略」にまとめています。この記事は、その中の「計算」の部分を深掘りしたものです。

iDeCoの受け取り方で使える控除は2種類|退職所得控除と公的年金等控除

iDeCoの老齢給付金は、一時金で受け取ると「退職所得」、年金で受け取ると「雑所得(公的年金等)」として課税されます。それぞれに使える控除と、課税のしくみが異なります。

受け取り方所得の区分使える控除課税のしくみ
一時金退職所得退職所得控除(掛金を拠出した年数で計算)控除後の金額の2分の1が課税対象。他の所得と合算しない分離課税
年金雑所得(公的年金等)公的年金等控除(年齢と年金収入の合計で計算)老齢基礎年金などと合算して控除を計算。他の所得と合算する総合課税
併用上記の組み合わせ両方一時金部分は退職所得、年金部分は雑所得として別々に計算

退職所得控除の計算式(一時金)

退職所得の計算(国税庁 No.1420)

  • 退職所得の金額:(収入金額 − 退職所得控除額)× 1/2
  • 拠出年数20年以下:40万円 × 年数(80万円に満たない場合は80万円)
  • 拠出年数20年超:800万円 + 70万円 ×(年数 − 20年)
  • 年数の数え方:1年未満の端数は1年に切り上げ。iDeCoでは掛金を拠出した期間(加入者であった期間)で数え、掛金を止めて運用だけしていた期間は含まれません

公的年金等控除の速算表(年金)

年金で受け取る場合は、iDeCoの年金と老齢基礎年金などの公的年金を合計した「公的年金等の収入金額」に対して、次の控除が適用されます(公的年金等に係る雑所得以外の所得が1,000万円以下の場合。令和8年分の速算表)。

公的年金等の収入合計65歳未満65歳以上
60万円以下所得は0円所得は0円
60万円超〜110万円以下収入 − 60万円所得は0円
110万円超〜130万円以下収入 − 60万円収入 − 110万円
130万円超〜330万円以下収入 × 0.75 − 27万5,000円収入 − 110万円
330万円超〜410万円以下収入 × 0.75 − 27万5,000円収入 × 0.75 − 27万5,000円
410万円超〜770万円以下収入 × 0.85 − 68万5,000円収入 × 0.85 − 68万5,000円
770万円超〜1,000万円以下収入 × 0.95 − 145万5,000円収入 × 0.95 − 145万5,000円
1,000万円超収入 − 195万5,000円収入 − 195万5,000円

ポイントは、公的年金等控除は「iDeCoの年金だけ」ではなく、老齢基礎年金などと合算した金額に対して1つの枠として使われることです。65歳以降は老齢基礎年金だけで控除枠の大半を使ってしまうケースが多く、iDeCoの年金が上乗せされると、その分がほぼそのまま課税対象の雑所得になります。

個人事業主のiDeCo出口戦略を解説する記事のアイキャッチ画像
【2026年版】個人事業主のiDeCo出口戦略|小規模企業共済との併用・受け取り方で損しない完全ガイド

個人事業主のiDeCo出口戦略を税理士が解説。退職所得控除の計算、小規模企業共済との併用・受け取り順、2026年の改正点まで整理し、一時金・年金で損しない受け取り方を具体的にまとめます。

【計算例1】1,000万円を一時金で受け取る場合(拠出20年)

ここからは、次の共通の前提で3パターンを計算します。実際の税額は、受け取る年の他の所得、各種控除、税率によって変わりますので、あくまで「控除のしくみの違い」を見るための例としてお読みください。

計算例の共通の前提

  • 加入状況:個人事業主。40歳から60歳まで20年間iDeCoの掛金を拠出し、60歳時点の資産額は1,000万円(運用益を含む)
  • 他の退職所得:同じ年にはない(小規模企業共済との重なりは後半で別に扱います)
  • 公的年金:65歳から老齢基礎年金を年80万円受け取ると仮定(計算を単純にするための仮の金額です)
  • 税率:所得税は令和8年分の速算表、復興特別所得税2.1%、住民税10%。基礎控除など他の所得控除は考慮しない

60歳で1,000万円を一時金で受け取ると、拠出20年に対応する退職所得控除は800万円です。

項目金額
収入金額1,000万円
退職所得控除額(40万円 × 20年)800万円
退職所得の金額((1,000万円 − 800万円) × 1/2)100万円
所得税(100万円 × 5%)5万円
復興特別所得税(所得税 × 2.1%)1,050円
住民税(100万円 × 10%)10万円
税額の合計(概算)約15万1,000円

1,000万円のうち課税対象になるのは100万円だけで、しかも退職所得は分離課税のため、その年に事業所得があっても合算されません。「退職所得の受給に関する申告書」を提出して受け取れば、源泉徴収で課税関係が完了し、原則として確定申告も不要です。

【計算例2】同じ1,000万円を年金で受け取る場合(65歳から10年)

同じ1,000万円を、65歳から10年間、年100万円ずつ年金で受け取るとします(運用益の増減は考えません)。65歳以降は老齢基礎年金(仮に年80万円)と合算して公的年金等控除を計算します。

項目(各年)iDeCoを年金で受け取る場合iDeCoの年金がない場合
公的年金等の収入合計180万円(80万円 + 100万円)80万円
公的年金等控除額(65歳以上・330万円以下)110万円80万円(収入が110万円以下なので所得は0円)
公的年金等に係る雑所得70万円0円
10年間の雑所得の累計700万円0円

一時金では課税対象が100万円(1回限り)だったのに対し、年金で受け取ると、10年間の累計で700万円が総合課税の雑所得として課税対象になります。この雑所得は事業所得など他の所得と合算されるため、65歳以降も事業を続けて所得がある方ほど、適用される税率が高くなりやすい点に注意が必要です。

一方で、他に所得がなければ、雑所得70万円は基礎控除の範囲に収まり、所得税がかからないこともあります。年金受取の税負担は「その年の他の所得がいくらか」で大きく変わる、というのが正確な理解です。

なお、公的年金を受け取る前の60〜64歳の間に年金受取を始めると、65歳未満の控除(最低60万円)が使われるため、iDeCoの年金100万円に対する雑所得は年40万円になります。65歳以降に老齢基礎年金と合算される場合と比べて、1年あたりの雑所得は小さくなります。

税理士田澤
税理士田澤

年金受取は「毎年少しずつ課税される」ため一見負担が軽く感じられますが、65歳以降は老齢基礎年金と控除枠を取り合うことになります。ご自身の年金見込額(ねんきん定期便)を確認したうえで、控除枠にどれだけ余裕があるかを見るのが最初の一歩です。

【計算例3】併用|控除に収まる分は一時金、超える分は年金で受け取る

一時金と年金を組み合わせる方法です。退職所得控除(800万円)に収まる800万円を60歳で一時金として受け取り、残りの200万円を65歳から10年間、年20万円ずつ年金で受け取るとします。

項目一時金部分(60歳)年金部分(65歳から各年)
収入金額800万円100万円(老齢基礎年金80万円 + iDeCo年金20万円)
控除額退職所得控除 800万円公的年金等控除(110万円以下は所得0円)
課税対象の所得0円0円

この前提では、一時金部分も年金部分も課税対象の所得が0円になります。「退職所得控除に収まる分は一時金、超える分は公的年金等控除の余りで受け取る」という考え方が、個人事業主の受け取り方の基本形です。

3パターンを並べると次のようになります。

受け取り方課税対象になる所得この例での税額(概算)
計算例1:一時金1,000万円退職所得100万円(1回)約15万1,000円
計算例2:年金100万円 × 10年雑所得70万円 × 10年 = 700万円他の所得と基礎控除しだい(総合課税)
計算例3:一時金800万円 + 年金20万円 × 10年0円0円

ただし、併用で受け取れるかどうか、年金の受取期間(5年以上20年以下)や回数をどこまで細かく選べるかは、加入している運営管理機関(金融機関)によって異なります。受け取り方を決める前に、ご自身の運営管理機関の給付ルールを確認してください。

年金受取は国民健康保険税にも影響する

所得税・住民税だけでなく、国民健康保険税(国保)への影響も見落とせません。個人事業主は退職後も国保に加入し続けることが多く、国保の所得割は前年の所得をもとに計算されるからです。

青森市の令和8年度の国民健康保険税では、所得割の計算に使う所得は「事業所得、不動産所得、給与所得、譲渡所得、雑所得等の合計金額」と土地建物等の分離課税の譲渡所得で、そこから基礎控除43万円を差し引いた額に税率(基礎分9.41%・後期高齢者支援金分2.46%・介護分2.74%・子ども・子育て支援金分0.30%)をかけます。iDeCoを年金で受け取った分は「雑所得」としてこの合計に含まれる一方、一時金の退職所得は分離課税で、この合計には含まれていません。

つまり計算例2のように年金受取で雑所得が毎年70万円増えると、所得税・住民税に加えて、国保税の所得割も10年間にわたって増える可能性があります。「税金は基礎控除の範囲で0円でも、国保税は増える」というケースがあるため、年金受取を検討するときは国保税まで含めて手取りを見る必要があります。

国保税の計算方法は市町村ごとに異なります。青森市以外にお住まいの方は、お住まいの市町村のページでご確認ください。

小規模企業共済と同時期に受け取ると控除枠はどうなる?【同じ年・10年以内・10年超】

小規模企業共済の共済金を一括で受け取ると、iDeCoの一時金と同じ「退職所得」になります(分割で受け取ると公的年金等の雑所得です)。iDeCoの一時金と近い時期に受け取ると、退職所得控除の枠が重なって調整されるため、受け取る年の間隔によって結果が変わります。

ここでは、先ほどの前提(iDeCo:40〜60歳の20年拠出、資産1,000万円)に、次の小規模企業共済を加えて3パターンを比べます。

小規模企業共済の前提

  • 加入期間:35歳から30年間加入し、廃業時に共済金1,500万円を一括で受け取る(仮の金額)
  • 共済単独の退職所得控除:800万円 + 70万円 × 10年 = 1,500万円
  • iDeCoとの重複期間:40〜60歳の20年(iDeCoの拠出期間がすべて共済の加入期間と重なる)
  • iDeCo一時金の受取:2026年1月1日以後(改正後のルールが適用される前提)

パターンA:同じ年に両方を一括で受け取る

同じ年に2つ以上の退職手当等を受け取る場合、退職所得控除は「最も長い期間」をもとに1つだけ計算し、重複する期間は二重に数えません。この例では35〜65歳の30年が最長なので、控除は1,500万円だけです。

項目金額
収入金額の合計(1,000万円 + 1,500万円)2,500万円
退職所得控除額(30年分・1つだけ)1,500万円
退職所得の金額((2,500万円 − 1,500万円) × 1/2)500万円
税額の概算(所得税57万2,500円 + 復興特別所得税1万2,022円 + 住民税50万円)約108万5,000円

パターンB:iDeCoを60歳、共済を65歳で受け取る(10年以内)

2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取り、その後の退職手当等(共済金の一括受取を含む)を受け取る年の「前年以前9年内」にiDeCoの一時金があると、共済側の退職所得控除から、重複期間(この例では20年分=800万円)に対応する控除額が差し引かれます。令和7年度税制改正で、この期間が「前年以前4年内」から「前年以前9年内」に延長されました(いわゆる「5年ルール」から「10年ルール」への変更)。

項目iDeCo一時金(60歳)共済金(65歳)
収入金額1,000万円1,500万円
退職所得控除額800万円(20年分)1,500万円 − 800万円(重複20年分)= 700万円
退職所得の金額100万円400万円
税額の概算約15万1,000円約78万円
2回の合計退職所得 500万円税額 約93万1,000円

控除の合計額はパターンAと同じ1,500万円ですが、受け取る年が分かれることで累進税率が低い区分に収まり、税額はパターンAより減ります。

パターンC:iDeCoを60歳、共済を70歳で受け取る(10年超)

共済金を受け取る年の前年以前9年内にiDeCoの一時金がなければ、調整は行われず、共済の加入期間30年に対応する退職所得控除1,500万円をそのまま使えます。

項目iDeCo一時金(60歳)共済金(70歳)
収入金額1,000万円1,500万円
退職所得控除額800万円1,500万円(調整なし)
退職所得の金額100万円0円
2回の合計退職所得 100万円税額 約15万1,000円

3パターンの比較です。

受け取り方使えた退職所得控除の合計退職所得の合計税額の概算
A:同じ年に両方1,500万円500万円約108万5,000円
B:iDeCo60歳 → 共済65歳1,500万円500万円約93万1,000円
C:iDeCo60歳 → 共済70歳2,300万円100万円約15万1,000円

受け取る間隔を10年以上あけると、iDeCoと共済のそれぞれで退職所得控除を使い切ることができます。逆に、共済金を先に一括で受け取り、その後にiDeCoの一時金を受け取る順番だと、「前年以前19年内」という長い判定期間が適用されるため、iDeCoの受給開始期限(75歳)との関係で間隔をあけにくくなります。受け取り順の考え方はハブ記事で整理しています。

なお、先に受け取った一時金の収入金額がその退職所得控除額に満たない場合は、重複期間の数え方に特例があり、差し引かれる控除額が上の例より小さくなります。廃業の時期や共済の加入状況によって実行できる設計は変わりますので、具体的な受け取り計画は個別の試算が必要です。

【課税所得別】小規模企業共済で個人事業主の節税額はいくら?月掛金別シミュレーションのアイキャッチ
【課税所得別】小規模企業共済で個人事業主の節税額はいくら?月掛金別シミュレーションを税理士が公開

小規模企業共済で個人事業主の税金はいくら安くなる?課税所得別・月掛金別に、所得税・復興特別所得税・住民税を含めた年間節税額を税理士がシミュレーション。受取時の出口戦略も解説します。

受け取り方を決める前に確認する5項目

受け取り前のチェックリスト

  • 拠出年数と退職所得控除の枠:掛金を拠出した年数から控除額を計算し、資産額が枠に収まるかを確認する
  • 公的年金の見込額:ねんきん定期便で老齢基礎年金などの見込額を確認し、公的年金等控除の枠にどれだけ余りがあるかを見る
  • 他の退職所得の予定:小規模企業共済の一括受取や退職金の予定があれば、受け取る年の間隔(10年・19年の判定)を確認する
  • 受け取る年の他の所得:65歳以降も事業を続けるなら、年金受取の雑所得が事業所得と合算されることを前提に考える
  • 運営管理機関の給付ルール:併用の可否、年金の受取期間・回数、手数料を確認する

この記事の計算例は、控除のしくみを比べるために前提を単純化しています。実際の判断では、受け取る年の所得・控除・国保税・受給開始時期の制約を含めた個別の試算が必要です。

よくある質問

Q. 一時金と年金は、結局どちらが有利ですか?

資産額が退職所得控除の枠に収まる方は、一時金で受け取ると課税対象の所得が0円になり、国保税にも影響しないため、一時金が基本になります。枠を超える方は、超える部分を年金で受け取り、公的年金等控除の余りを使う「併用」が候補です。老齢基礎年金の額や受け取る年の他の所得によって結論は変わります。

Q. 一時金の受け取りで確定申告は必要ですか?

受け取り時に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、正しい税額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は不要です。提出しない場合は収入金額の20.42%が源泉徴収され、精算には確定申告が必要になります(国税庁 No.1420)。

Q. 小規模企業共済を分割で受け取る場合はどうなりますか?

分割で受け取る共済金は、iDeCoの年金と同じ「公的年金等の雑所得」として、老齢基礎年金などと合算して公的年金等控除を計算します。iDeCoを一時金、共済を分割にすれば退職所得控除の重なりは生じませんが、公的年金等控除の枠を共済とiDeCoの年金が取り合う形になります。

Q. 2026年からの「10年ルール」は、すでにiDeCoに加入している人にも適用されますか?

加入時期ではなく受け取り時期で判定されます。2026年1月1日以後にiDeCoの一時金を受け取り、その後に退職手当等を受け取る場合に「前年以前9年内」の判定が適用されます。2025年12月31日以前に受け取ったiDeCoの一時金については、従来の「前年以前4年内」で判定します(国税庁 No.2735)。

まとめ|控除に収まる分は一時金、超える分は年金が基本形

iDeCoの一時金には退職所得控除、年金には公的年金等控除が使われ、同じ1,000万円でも課税対象の所得は「100万円(一時金)」「累計700万円(年金)」「0円(併用)」と大きく変わります。年金受取は所得税・住民税だけでなく国保税にも影響するため、手取りで比べることが大切です。

小規模企業共済の共済金を一括で受け取る予定がある方は、iDeCoの一時金との間隔を10年以上あけられるかどうかで、使える退職所得控除の合計が大きく変わります。受け取りの数年前から、拠出年数・公的年金の見込額・他の退職所得の予定を整理しておきましょう。

田澤壱高税理士事務所では、iDeCo・小規模企業共済の受け取り方の試算をオンラインでご相談いただけます。ご相談の流れは、お問い合わせ(無料)→ オンライン相談(有料・1時間22,000円)→ お見積書の作成、の順です。詳しくはサービス内容・料金をご覧ください。

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