現金払いの領収書について、「紙の原本は取っておかないといけないのでは?」「保管スペースの確保が大変」と感じている方は多いと思います。
結論から言うと、電子帳簿保存法(スキャナ保存制度)の一定のルールを守れば、紙の領収書を保管しなくても問題ありません。
ただし、単に「スキャンして保存すれば良い」というわけではなく、法律で決められた「期限」や「画質」、「システム要件」を守る必要があります。
これらを守らないと、せっかくデータ化しても紙の原本を捨てられなくなってしまいます。
当事務所では、法要件を確実に満たすため、以下の流れでの管理をおすすめしています。
ここでは、その具体的なルールと、よくある間違い(Google Driveだけで完結させるリスク)について整理します。
※ 本記事は、国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月版)にもとづき、2026年10月時点の内容で解説しています。
紙の領収書を保管しなくていい理由
現在は、電子帳簿保存法により、紙で受け取った領収書であっても、一定の要件を満たせばデータ保存が認められています。
具体的には、紙の領収書をスキャナやスマホで読み取り(スキャナ保存)、最低限の同等確認(画像が紙と同じように読めるかどうかの確認)を行えば、即時に紙の原本を廃棄して差し支えありません。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
しかし、これには絶対に守らなければならない条件があります。
重要!原本を捨てるための「3つの必須条件」

「Google Driveにとりあえず入れておけばOK」と思っていると、税務調査で否認されるリスクがあります。
原本を合法的に廃棄するためには、以下の3点をクリアする必要があります。
1. 「いつまでに」保存するか(入力期間の制限)
領収書をもらってから、いつまでも放置して良いわけではありません。
法律上、以下のどちらかの期限内にデータ化(入力)する必要があります。
• 早期入力方式: 受領後、速やか(おおむね7営業日以内)に入力する。
• 業務処理サイクル方式: 社内規程を作った上で、最長2ヶ月+おおむね7営業日以内に入力する。
ここでいう「入力」は、スキャンするだけでなく、期限内にタイムスタンプを付ける(または、保存した時刻を客観的に証明できるクラウドサービスに保存する)ところまでを指します。
【注意】 もしこの入力期間(期限)を過ぎてしまった場合、スキャンデータがあっても紙の原本を保管し続けなければなりません(廃棄できません)。 「溜めてからまとめてスキャン」はリスクが高いため、こまめな処理が鉄則です。
2. 「どんな画質で」保存するか(解像度・カラー)
スマホで撮影する場合でも、画質にルールがあります。
• 解像度: 200dpi以上相当であること。
• カラー: 領収書や契約書などの「重要書類」は、必ずカラー(赤・緑・青それぞれ256階調以上)で読み取る必要があります。
白黒やグレースケールで撮影してしまうと、要件違反となります(重要書類の場合)。
撮影時はアプリの設定を確認し、カラーで撮影してください。
3. 「どこに」保存するか(検索機能と改ざん防止)
ここが最も重要です。保存するシステムには、以下の機能が求められます。
• 検索機能: 「取引年月日」「取引金額」「取引先」で検索でき、かつ「日付や金額の範囲指定」や「項目の組み合わせ検索」ができること。なお、税務調査でデータのダウンロードを求められたときに応じられるようにしておけば、範囲指定と組み合わせ検索の機能は不要になります。
• タイムスタンプ: 期限内にタイムスタンプを付けること。ただし、保存した時刻を客観的に証明できる機能を持つクラウドサービスに期限内に保存した場合は、タイムスタンプの代わりになります。
• 訂正・削除の履歴: 訂正・削除の履歴が残る(または訂正・削除ができない)システムで保存すること。履歴が残るだけでは、タイムスタンプの代わりにはなりません。
• 帳簿とのつながり: 領収書のデータと帳簿の記録を、互いにたどれるようにしておくこと。
このほか、データを表示・印刷できるディスプレイやプリンタ、システムの説明書(オンラインマニュアルでも可)を備えておくことも必要です。
Google Drive単体利用の注意点
Google DriveにただPDFをアップロードするだけでは、上記の「検索要件」を満たすのが困難です。
Google Driveを使う場合は、ファイル名を「20231031_11000_株式会社A.pdf」のように規則的に付けて検索できるようにするか、別途Excelで索引簿を作る必要があります。
最も確実で楽なのは、JIIMA認証(法的要件を満たしていることの認証)を受けた「クラウド会計ソフト」や「経費精算システム」に直接アップロードすることです。
システムの機能に関する要件は、ソフト側で備えられています。ただし、入力期限を守ることや画像の確認は、使う人の側で行う必要があります。初期設定のままでは要件を満たさない場合もあるので、設定もあわせて確認してください。
Googleドライブで領収書を撮影・整理する具体的な手順は、Googleドライブで領収書をスキャン保存する方法で解説しています。
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Googleドライブで領収書をスキャン保存する方法|電子帳簿保存法の注意点を税理士が解説
Googleドライブで現金払いの領収書をスキャン保存する具体的な手順と、電子帳簿保存法(スキャナ保存制度)との関係を税理士が解説します。Googleドライブ単体で完結できるのか、クラウド会計ソフトとどう使い分けるかまで整理しました。
領収書の原本はいつ捨ててよい?
上で説明した条件を満たしてデータを保存し、画像と紙を見比べる「同等確認」を済ませれば、受け取ったその日でも紙の原本を捨てて差し支えありません。定期的な検査が終わるまで紙を保管しておく必要はなくなっています。
一方で、次のような領収書は、紙の原本を残しておいてください。
条件を満たさずに保存したデータは、税法上の保存書類として扱われません。紙の原本も残っていないと、消費税の仕入税額控除が認められなかったり、青色申告の承認が取り消されたりする可能性があります。
なお、メールやWebで受け取ったPDFの領収書は「電子取引」にあたり、紙の領収書とは別のルールで、電子データのまま保存します。印刷した紙をスキャンして保存する方法は認められていません。
スマホで撮った写真でもよい?
スマートフォンで撮った写真でも、スキャナ保存はできます。電子帳簿保存法の「スキャナ」には、スマートフォンやデジタルカメラも含まれます。私物のスマートフォンを使うことも、法令上は制限されていません(使う機器の操作説明書を備えておく必要はあります)。
画質の基準は、上で説明した「200dpi相当以上・カラー」です。200dpi相当かどうかは、撮った書類の大きさと画像の画素数で判断します。たとえばA4サイズの書類なら、縦2,338画素×横1,654画素(約387万画素)以上が必要です。
スマートフォンの写真の情報に「72dpi」と表示されることがありますが、これは画像の規格上の既定値で、実際の解像度を表しているとは限りません。
写真を撮っただけでは、紙の原本は捨てられません。期限内に、条件を満たす保存先へ保存することが前提です。
領収書ペーパーレス化の手順|当事務所がおすすめする運用フロー

以上のルールを踏まえ、失敗しないペーパーレス化の手順をご紹介します。
ステップ0:始める前に決めておくこと
• スキャナ保存する書類: 書類の種類ごとに選べます。領収書だけを対象にすることもできます。始めた日は記録しておきます。
• 保存先: 条件を満たすソフト・サービスを選びます。JIIMA認証の有無は、JIIMAの認証製品一覧で確認できます。
• 入力のルール: 受け取ってからおおむね7営業日以内に保存するか、事務処理規程を作って業務サイクル(最長2か月)に合わせるかを決めます。規程のサンプルは国税庁の一問一答に掲載されています。
ステップ1:スマホで撮影(期限厳守!)
領収書を受け取ったら、おおむね7営業日以内にスマホで撮影します。
このとき、必ずカラー撮影になっているか確認してください。
ステップ2:クラウド会計ソフトに取り込む
撮影したデータを、クラウド会計ソフト(freeeやマネーフォワード クラウドなど)の「ファイルボックス」や「証憑保存機能」のうち、JIIMA認証を受けたものにアップロードします。
Google Driveはあくまで一時保管場所として使い、最終的な保存場所は会計ソフトにすることをおすすめします。
ステップ3:画像の確認(同等確認)
アップロードされた画像を画面上で見て、
• 文字がはっきり読めるか
• 折れ曲がりで金額等が隠れていないか を確認します。
ステップ4:紙の原本を廃棄
ステップ3の確認が終われば、その場ですぐに紙の領収書を廃棄してOKです。
以前のように、定期検査まで保管しておく必要はありません。
出典: 国税庁「電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】」(令和8年7月)問3・5・6・10・21〜24・26・31・41・53・59・60・65・67(2026年10月時点で確認)
最後に
「紙の領収書は捨てられない」というのは過去の話ですが、捨てるためには「期限」と「保存方法」のルールを守る必要があります。
• 入力期限(約7日以内)を守る
• カラーで撮影する
• JIIMA認証のある会計ソフト等で保存する
この3点を守ることで、「紙を溜めない」「探さない」「確認が楽」という快適な経理環境を作ることができます。
法人の税務は継続的なサポートが重要です。適切な顧問契約により、節税や資金繰りの改善にもつながります。
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