相続税申告が必要どうか調べる方法

節税・税務の考え方

相続税申告が必要か自分で確認する方法|課税財産の総額の出し方をやさしく解説

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税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

相続が発生したからといって、必ず相続税申告が必要になるわけではありません。

まず確認したいのは、相続財産を大まかに評価し、差し引けるものを引いたうえで、基礎控除を超えるかどうかです。一般家庭で多い財産であれば、現預金、土地、家屋、生命保険金などを整理することで、申告が必要そうかどうかの目安をつかみやすくなります。

この記事では、専門知識がない方でも相続税申告の要否を判断しやすいように、課税財産の総額の出し方をできるだけわかりやすく解説します。厳密な申告書作成のためではなく、まずは「うちは申告が必要そうか」を確認するための記事としてお読みください。

相続税申告が必要かどうかは「課税財産の総額」と「基礎控除」の比較で決まる

相続税申告が必要かどうかは、まず課税財産の総額が基礎控除を超えるかどうかで判断します。

つまり、最初にやるべきことは税額計算ではなく、相続財産の総額を大まかに把握することです。財産を洗い出し、生命保険金の非課税枠や債務控除などを反映したうえで、基礎控除と比べれば、申告が必要そうかどうかの目安が見えてきます。

なお、基礎控除の計算には法定相続人の数が関係します。

税理士田澤
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基礎控除の計算式や考え方を詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

まず確認したい相続財産の主な種類

相続税申告の要否を確認するには、まずどのような財産があるのかを整理することが大切です。一般家庭で確認したい主な財産は、次のとおりです。

現金・預貯金

現金や普通預金、定期預金などは、もっとも把握しやすい財産です。通帳や残高証明書を確認し、死亡日時点の残高を把握します。

土地

自宅の敷地や空き地などの土地は、一般家庭でも大きな金額になりやすい財産です。相続税申告の要否を判断するうえでも重要な項目です。

家屋

自宅建物や賃貸用建物なども相続財産に含まれます。一般家庭の家屋であれば、固定資産税の課税明細書を見ながら大まかな金額を確認しやすいでしょう。

生命保険金

死亡保険金は受け取り方によって相続税の対象になることがあります。ただし、一定の非課税枠があるため、他の財産とは少し分けて考える必要があります。

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その他の財産

自動車、貴金属、ゴルフ会員権などがある場合は、それらも確認対象です。一般家庭では、金額が大きくなければ概算で確認してもよいケースが多いでしょう。

一般家庭向け|相続財産の評価はまずこう考える

申告要否を確認する段階では、すべてを厳密に評価する必要はありません。まずは一般家庭で使いやすい方法で、大まかな金額をつかむことが大切です。

現預金は死亡日時点の残高で考える

現預金は、被相続人が亡くなった日時点の残高を基準に考えます。通帳や金融機関の残高証明書などを見れば確認しやすく、相続財産の中でも比較的わかりやすい項目です。

家屋は固定資産税評価額を目安にする

家屋は、固定資産税の課税明細書や納税通知書に記載された固定資産税評価額を目安にすると、一般の方でも把握しやすいです。厳密な評価が必要になる場面もありますが、まずは申告要否の確認という意味では、この金額を使って大まかに整理するとよいでしょう。

土地は固定資産税の明細書を使ってざっくり確認する

土地は本来、相続税評価額で確認する必要がありますが、一般の方にとっては難しく感じやすい部分です。そこで、まずは毎年春ごろに届く固定資産税の課税明細書(納税通知書)を使って概算する方法がわかりやすいでしょう。

計算の目安は、固定資産税評価額 × 約1.14です。場合によっては、1.1倍から1.2倍程度でざっくり確認しても構いません。

これは、一般的な価格水準の目安として、固定資産税評価額が実勢価格の約70%、相続税評価額が約80%になるように設定されているとされるためです。固定資産税評価額をベースに約1.14倍すると、相続税評価額に近い金額の目安をつかみやすくなります。

ただし、この方法はあくまで概算です。形が複雑な土地や、利用状況に特徴がある土地では大きくずれることがあります。ここでは「申告が必要そうかどうかを確認するためのざっくりした方法」と考えてください。

生命保険金は非課税枠を差し引いて考える

死亡保険金には、500万円 × 法定相続人の数の非課税限度額があります。そのため、生命保険金の全額をそのまま課税財産に加えるのではなく、この非課税枠を差し引いたうえで考えることが大切です。

税理士田澤
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法定相続人の数え方がわからない場合は、先に相続人を確認しておく必要があります。詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

生前贈与は簡単にだけ触れておく

生前贈与については、亡くなる前の贈与でも相続税の計算に含める必要があるケースがあります。ただし、この論点は個別事情によって判断が分かれやすいため、この記事では深入りしません。まずは現時点で把握しやすい財産を中心に、申告要否の目安を確認することが大切です。

相続財産から差し引けるもの(債務控除)

相続税申告の要否を確認するときは、財産を足すだけでなく、差し引けるものも確認します。代表的なのが債務控除です。

借入金

借入金は、相続財産から差し引けるものの代表例です。被相続人の死亡時点で返済義務が残っている債務で、実際に相続人が引き継ぐものは、課税財産の総額を考える際に差し引ける可能性があります。

住宅ローンは団信の有無を必ず確認する

住宅ローンについては注意が必要です。団体信用生命保険に加入していて、被相続人が亡くなったことで住宅ローンの返済が不要になる場合、そのローンは相続人が支払う必要がありません。そのため、通常は債務控除の対象になりません。

一方で、団信が付いておらず、実際に相続人が返済を引き継ぐ債務であれば、債務控除を検討することになります。住宅ローンが残っている場合は、まず団信の有無を確認するとよいでしょう。

未払金

入院費、施設費、税金など、死亡時点で支払うべき金額が確定している未払金は、債務控除の対象になることがあります。支払先や金額がわかる資料を確認して整理します。

葬式費用

葬式費用も、一定の範囲で差し引けるものがあります。おおまかな申告要否の確認では、葬儀社への支払いなどを概算で入れておくと整理しやすいでしょう。ただし、香典返しや法要費用など、対象外になるものもあるため、厳密な判断は別途必要です。

課税財産の総額を出す流れ

相続税の申告が必要かどうかの判定

課税財産の総額を確認する流れは、次のように考えるとわかりやすいです。

課税財産の総額を確認する流れ

  • 現預金・土地・家屋・生命保険金などの財産を洗い出す
  • それぞれの大まかな評価額を入れる
  • 生命保険金は非課税枠を差し引く
  • 借入金、未払金、葬式費用など差し引けるものを確認する
  • 課税財産の総額の目安を出す
  • 基礎控除と比較する

かなり簡単に表すと、次のようなイメージです。

相続財産の合計 − 非課税枠 − 債務控除など = 課税財産の総額の目安

税理士田澤
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まずはこの流れで整理すると、相続税申告が必要そうかどうかを判断しやすくなります。

基礎控除と比較して申告が必要かを判断する

課税財産の総額の目安が出たら、基礎控除と比較します。

課税財産の総額が基礎控除を超えなければ、一般的には相続税申告は不要です。逆に、基礎控除を超える場合は、申告が必要になる可能性が高くなります。

ただし、これはあくまで申告要否を確認するための第一段階です。実際には、各種特例や財産評価の詳細によって結論が変わることがあります。

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基礎控除の具体的な計算方法や考え方については、こちらの記事で詳しく解説しています。

我が家はどうなる?相続税申告の要否 簡易シミュレーター

ここまで読んでも、実際に自分の家庭ではどうなるのかイメージしにくいことがあります。

そこで、現預金、家屋、土地、生命保険金、債務控除、法定相続人の数を入力すると、課税財産の総額の目安と基礎控除を比較して、相続税申告が必要そうかどうかを確認できる簡易シミュレーターを用意しました。

相続税申告の要否 簡易シミュレーター

現預金、家屋・土地の評価額、生命保険金、債務控除、法定相続人の数を入力すると、課税財産の総額の目安基礎控除を自動計算し、相続税申告が必要そうかどうかの目安を表示します。

このシミュレーターの考え方
・土地は、入力した固定資産税評価額 × 1.14で相続税評価額の目安を自動計算します。
・生命保険金は 500万円 × 法定相続人の数 の非課税枠を差し引いて計算します。
・基礎控除は 3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 で計算します。
・団信で完済される住宅ローンは通常、債務控除に含めません。

一般家庭をイメージした簡単な計算例

配偶者と子2人、自宅と預金があるケース

たとえば、次のようなケースを考えてみます。

  • 土地:2,000万円
  • 家屋:500万円
  • 預貯金:1,800万円
  • 生命保険金:1,500万円
  • 借入金:0円
  • 葬式費用:150万円
  • 法定相続人:3人

この場合、生命保険金の非課税枠は 500万円 × 3人 = 1,500万円 です。そのため、生命保険金は非課税枠の範囲内となり、課税対象に加わらない計算になります。

相続財産の合計は、土地2,000万円、家屋500万円、預貯金1,800万円で合計4,300万円です。ここから葬式費用150万円を差し引くと、課税財産の総額の目安は4,150万円となります。

一方、法定相続人が3人の場合の基礎控除は、3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円です。

税理士田澤
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このケースでは、課税財産の総額の目安が基礎控除を下回るため、一般的には相続税申告は不要な可能性が高いと考えられます。

この段階では概算でよいが、注意したい財産

この記事は、一般家庭の財産を前提に、相続税申告の要否を大まかに確認するためのものです。ただし、次のような財産がある場合は、概算ではずれが大きくなることがあります。

複雑な土地

形がいびつな土地、間口が狭い土地、奥行が長い土地、貸している土地などは、単純な概算では実際の相続税評価額と差が出やすくなります。

非上場株式

自社の株式などの非上場株式は、一般の方が自分で評価するのが難しい財産です。保有している場合は、ざっくり把握にとどめ、必要に応じて専門家に確認するのが安心です。

名義預金や多額の生前贈与

名義が家族になっていても、実質的には被相続人の財産と判断されることがあります。また、多額の生前贈与がある場合は、相続税の計算に影響することがあります。こうした論点がある場合は、単純な概算だけでは判断しないほうがよいでしょう。

法定相続人の数がわからないときは、先に相続人を確認する

基礎控除や生命保険金の非課税枠は、どちらも法定相続人の数が前提になります。そのため、法定相続人が誰になるのかがわからない場合は、先に相続人を確認することが大切です。

特に、前婚の子がいる場合や、相続放棄をした人がいる場合などは、単純に「配偶者と子の人数」だけで考えられないことがあります。

税理士田澤
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相続人の調べ方については、以下の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。

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相続税申告が必要か自分で確認する方法まとめ

相続税申告が必要かどうかを確認する第一歩は、課税財産の総額と基礎控除を比べることです。

一般家庭であれば、まずは現預金、土地、家屋、生命保険金を中心に確認し、そこから生命保険金の非課税枠や債務控除を反映させれば、大まかな申告要否を判断しやすくなります。

土地については、固定資産税の課税明細書を使い、固定資産税評価額に約1.14を掛けることで、相続税評価額の目安をつかみやすくなります。また、住宅ローンが残っていても、団信で完済されるなら通常は債務控除できない点にも注意が必要です。

一方で、複雑な土地、非上場株式、名義預金、多額の生前贈与などがある場合は、概算では判断が難しいことがあります。まずはこの記事やシミュレーターで大まかな目安を確認し、必要に応じて専門家へ相談するとよいでしょう。

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