遺言書がある場合の相続手続きの流れ

節税・税務の考え方

遺言書がある場合の相続手続きの流れ|確認から名義変更までわかりやすく解説

アバター画像

税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。

相続が発生したとき、遺言書が見つかると「遺産分割協議はしなくていいのか」「何から手続きすればいいのか」と迷いやすくなります。

遺言書がある場合は、まず遺言書の種類を確認し、その種類に応じて検認が必要かどうかを判断したうえで、預貯金の払戻しや不動産の名義変更などの手続きを進めていくのが基本です。

ただし、遺言書があるからといって、何もしなくても自動で相続手続きが完了するわけではありません。相続税申告が必要になることもありますし、内容によっては遺留分への配慮が必要になることもあります。

この記事では、遺言書がある場合の相続手続きの流れを、できるだけわかりやすく整理して解説します。

遺言書がある場合の相続手続きはどう進む?

遺言書がある場合は、まず遺言書の内容を確認し、その内容に沿って相続手続きを進めるのが基本です。遺言書がない場合のように、最初から相続人全員で遺産分割協議を行うケースとは流れが異なります。

もっとも、遺言書があるからといって、必ずしも遺産分割協議が一切不要になるとは限りません。遺言書に記載されていない財産がある場合や、相続人全員で別の分け方に合意する場合などは、遺産分割協議が必要になることもあります。

税理士田澤
税理士田澤

遺言書がある場合の大まかな流れは、次のとおりです。

遺言書がある場合の流れ

  • 遺言書の種類を確認する
  • 検認が必要かどうかを確認する
  • 遺言執行者がいるかを確認する
  • 預貯金・不動産などの名義変更や払戻しを進める
  • 必要に応じて相続税申告などを行う

まず確認したいのは遺言書の種類

遺言書の種類

遺言書がある場合の相続手続きでは、最初にどの種類の遺言書なのかを確認することが重要です。というのも、遺言書の種類によって、家庭裁判所での検認が必要かどうかが変わるからです。

実務上、よくあるのは次の3パターンです。

遺言書の種類主な特徴検認
自宅保管の自筆証書遺言本人が作成し、自宅などで保管していた遺言書必要
公正証書遺言公証人が作成し、公証役場で保管される遺言書不要
法務局保管の自筆証書遺言本人が作成し、法務局の遺言書保管制度を利用して保管した遺言書不要

特に注意したいのは、同じ自筆証書遺言でも、自宅保管か法務局保管かで手続きが変わる点です。

税理士田澤
税理士田澤

まずは原本や保管証、通知書などを見て、どの種類に当たるのかを整理しましょう。

自筆証書遺言がある場合の流れ

自宅などで保管されていた自筆証書遺言が見つかった場合は、すぐに内容どおりの相続手続きを進めるのではなく、まず家庭裁判所で検認の手続きを行います。

封がされている遺言書は、絶対に勝手に開封してはいけません。家庭裁判所以外の場所で開封すると、5万円以下の過料に処される可能性があります。必ずそのままの状態で家庭裁判所へ持ち込み、検認の手続きを行ってください。

自筆証書遺言の相続手続きの流れを整理すると、次のようになります。

自筆証書遺言の相続手続きの流れ

  • 遺言書を確認し、種類が自宅保管の自筆証書遺言かを確認する
  • 家庭裁判所へ検認を申し立てる
  • 検認手続き後、検認済みの遺言書を使って各種相続手続きを進める
税理士田澤
税理士田澤

自筆証書遺言がある場合は、検認前に手続きを進めようとしないことが大切です。

公正証書遺言がある場合の流れ

公正証書遺言がある場合は、家庭裁判所での検認は不要です。そのため、自宅保管の自筆証書遺言よりも、比較的スムーズに相続手続きへ進みやすいのが特徴です。

もっとも、公正証書遺言があるからといって、すぐにすべての名義変更が終わるわけではありません。金融機関や法務局で必要となる書類をそろえたうえで、遺言書に沿って個別の手続きを進める必要があります。

一般的な流れは次のとおりです。

公正証書遺言がある場合の流れ

  • 公正証書遺言の正本または謄本を確認する
  • 遺言執行者の有無を確認する
  • 金融機関、法務局などで必要書類をそろえて手続きを進める

法務局保管の自筆証書遺言がある場合の流れ

法務局の遺言書保管制度を利用して保管されている自筆証書遺言については、家庭裁判所での検認は不要です。

この場合は、法務局で交付を受ける遺言書情報証明書などを利用して、相続手続きを進めていくことになります。自宅保管の自筆証書遺言と違って、検認を経ずに各種相続手続きへ進めるのが大きな違いです。

流れを整理すると、次のようになります。

法務局保管の自筆証書遺言がある場合の流れ

  • 法務局保管の遺言書かどうかを確認する
  • 遺言書情報証明書など必要書類を取得する
  • その書類を使って、預貯金払戻しや不動産名義変更などを進める
税理士田澤
税理士田澤

そのため、「自筆証書遺言だから必ず検認が必要」とは限りません。どこで保管されていたのかを確認することが重要です。

遺言執行者がいるかを確認する

遺言書がある場合は、内容だけでなく、遺言執行者が指定されているかも確認しましょう。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために手続きを行う人です。遺言執行者が指定されている場合は、原則として遺言執行者だけが手続きを行う権限を持ちます。この場合、他の相続人が勝手に預貯金を引き出したり、不動産を処分したりすることは法律で禁止されています。そのため、まずは遺言執行者に連絡をとって手続きを進めてもらうことになります。

一方で、遺言執行者がいない場合は、遺言の内容や財産の種類に応じて、相続人が手続きを進めることになります。誰が主体になって動くのかが曖昧だと、手続きが止まりやすくなるため、早めに確認しておくと安心です。

遺言書に沿って進める主な相続手続き

遺言書の確認や検認の有無を整理したら、次は実際の相続手続きを進めます。主な手続きは次のとおりです。

主な手続き内容
預貯金の払戻し・解約金融機関所定の書類と遺言書関係書類を提出して進める
不動産の名義変更遺言の内容に沿って相続登記を行う
株式・投資信託などの名義変更証券会社などで個別の相続手続きを行う
自動車やその他財産の名義変更財産の種類ごとに必要書類をそろえて進める

預貯金の払戻し・解約

金融機関では、遺言書の種類に応じて必要書類が変わることがあります。自宅保管の自筆証書遺言であれば検認後の遺言書、公正証書遺言なら正本や謄本、法務局保管の自筆証書遺言なら遺言書情報証明書などを用いて手続きを進めます。

不動産の名義変更

不動産については、遺言書の内容に基づいて相続登記を行います。遺言書があれば必ず登記が不要になるわけではなく、実際には法務局での名義変更手続きが必要です。

なお、2024年4月より相続登記は義務化されています。遺言により不動産を取得したと知った日から3年以内に手続きをしないと罰則の対象になる可能性があるため、早めの対応が必要です。

株式やその他財産の名義変更

証券口座、投資信託、自動車なども、財産の種類ごとに相続手続きが必要です。遺言書がある場合でも、各手続先の書類要件までは共通ではないため、事前確認が大切です。

遺言書があっても相続税申告が必要な場合がある

遺言書があることと、相続税申告が必要かどうかは別問題です。

遺言書によって誰がどの財産を取得するかが決まっていても、相続財産の総額が基礎控除を超える場合は、相続税申告が必要になる可能性があります。

つまり、遺言書があるから相続税申告も不要になる、というわけではありません。遺言書の確認と並行して、相続税申告が必要かどうかも別途確認することが大切です。

遺言書があっても注意したいポイント

遺言書があっても注意したいポイント

自筆証書遺言をすぐに開封しない

自宅保管の自筆証書遺言は、見つけたらすぐに内容を確認したくなりますが、家庭裁判所での手続きを意識する必要があります。慌てて進めず、まず種類を確認しましょう。

遺言書だけで全手続きが完了するわけではない

遺言書があっても、戸籍、住民票、固定資産評価証明書など、各種手続きに必要な書類は別途そろえる必要があります。

遺留分の問題が出ることがある

遺言書の内容によっては、特定の相続人に財産が偏ることがあります。その場合、他の相続人の遺留分が問題になることもあります。

内容が曖昧だと手続きしにくいことがある

遺言書に記載された財産の特定が不十分な場合や、記載内容が実際の財産状況と一致しない場合は、手続き先で対応に苦慮することがあります。

税理士田澤
税理士田澤

判断に迷う場合は、専門家に相談したほうが安全です。

遺留分については、こちらの記事で解説しています。

【遺言書がある場合の相続手続き】まとめ

遺言書がある場合の相続手続きでは、まず遺言書の種類を確認することが大切です。自宅保管の自筆証書遺言であれば検認が必要ですが、公正証書遺言や法務局保管の自筆証書遺言であれば検認は不要です。

その後は、遺言執行者の有無を確認し、遺言書の内容に沿って預貯金の払戻し、不動産の名義変更、その他財産の相続手続きを進めていきます。

また、遺言書があっても、相続税申告が必要になる場合や、遺留分への配慮が必要になる場合があります。遺言書が見つかったら安心、ではなく、種類と手続きの流れを正しく整理して進めることが重要です。

税理士田澤
税理士田澤

当事務所では相続発生から申告までオンラインでサポートします。以下のボタンからお問い合わせください。

相続手続き全体の流れを確認したい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。相続税の料金表はこちら。

お問い合わせページはコチラ

相続税 申告の流れ 青森市
【青森市の税理士が解説】相続発生から申告完了まで!相続税申告の流れを分かりやすく解説

身近な方が亡くなられ、深い悲しみのなかで「相続の手続き、何から手をつければいいのか分からない」と不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。 この記事では、青森市で相続のご相談を多く承っている税理士 ...

  • この記事を書いた人
アバター画像

税理士 田澤壱高

青森市を中心に活動する、ひとり税理士です。 クラウド会計・オンラインでのやり取りを基本とし、 記帳や資料管理の手間をできるだけ減らすことを大切にしています。 完全なペーパーレス運用を目指しながら、 経営判断に集中できる環境づくりを支援します。