遺産分割協議では、相続人全員で「誰がどの財産を取得するか」を話し合って決めます。
ただ、実際には「とりあえず法律どおりに分ければいいのか」「長男が実家を相続するなら他の相続人はどうなるのか」「遺言があっても何ももらえないことはあるのか」など、分け方で悩むことが少なくありません。
そこで知っておきたいのが、法定相続分と遺留分です。法定相続分は法律上の基本的な分け方の目安で、遺留分は一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
この記事では、遺産分割協議の基本から、法定相続分と遺留分の違い、実際に分け方を考えるときのポイントまで、できるだけわかりやすく整理して解説します。
遺産分割協議とは
遺産分割協議とは、亡くなった方の遺産を、相続人全員でどのように分けるか話し合う手続きです。
相続財産には、預貯金や不動産だけでなく、自動車、有価証券、場合によっては借入金なども含まれます。これらを整理したうえで、誰が何を取得するのかを決めていきます。
遺言書があれば、その内容に従って遺産の承継先が決まることがありますが、遺言がない場合は、原則として相続人全員で協議することになります。
また、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要です。
一部の相続人だけで決めても、有効な遺産分割協議にはなりません。
遺産分割は法定相続分どおりでなければならないのか
結論からいうと、必ずしも法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。
法定相続分は、法律が定めた基本的な分け方の目安です。相続人全員が納得していれば、法定相続分と異なる分け方をすることも可能です。
たとえば、配偶者が自宅を取得し、子どもは預貯金を多めに取得する、不動産を特定の相続人が取得してその代わりに他の相続人へ代償金を支払う、といった分け方もありえます。
ただし、法定相続分から大きく外れる分け方をすると、不公平感が生じやすく、話し合いがまとまりにくくなることがあります。
遺産の分け方で迷ったときは、まず法定相続分を基準に考えると整理しやすいでしょう。
法定相続分とは

法定相続分とは、民法で定められた相続割合の目安です。誰が相続人になるかによって割合が変わります。
配偶者と子が相続人の場合
配偶者が2分の1、子が全体で2分の1です。子が複数いる場合は、その2分の1を人数で均等に分けます。
配偶者と直系尊属が相続人の場合
子がいない場合で、配偶者と父母や祖父母などの直系尊属が相続人になるときは、配偶者が3分の2、直系尊属が全体で3分の1です。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
子も直系尊属もいない場合で、配偶者と兄弟姉妹が相続人になるときは、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が全体で4分の1です。
配偶者がいない場合
配偶者がいない場合は、子がいれば子が、子がいなければ直系尊属が、さらに直系尊属もいなければ兄弟姉妹が相続人になります。同じ順位の相続人が複数いるときは、原則として均等に分けます。
法定相続分はあくまで基準ですが、遺産分割協議の出発点として非常に重要です。「まず法律上の目安を知る」ことで、話し合いの土台を作りやすくなります。
遺留分とは
遺留分とは、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。
たとえば、遺言で「全財産を長男に相続させる」と書かれていたとしても、他の相続人に遺留分があれば、何も主張できないとは限りません。遺留分を侵害された相続人は、一定額を請求できる可能性があります。
遺留分が認められるのは、一般に配偶者、子、直系尊属です。兄弟姉妹には遺留分はありません。
つまり、兄弟姉妹が相続人となるケースでは、法定相続分はあっても、遺留分までは保障されていないという点に注意が必要です。
法定相続分と遺留分の違い
法定相続分と遺留分は似ているようで、意味が異なります。
法定相続分は、法律上の基本的な分け方の目安です。遺産分割協議で迷ったときの基準になりますが、相続人全員が合意すれば違う割合で分けることもできます。
遺留分は、一定の相続人に保障された最低限の取り分です。遺言や生前贈与などによって極端に偏った財産移転が行われた場合に、後で問題になることがあります。
かなり簡単にいうと、法定相続分は「基本の目安」、遺留分は「最低限の保障」です。
我が家はどうなる?法定相続分・遺留分の簡易シミュレーター
法定相続分や遺留分は、言葉で説明を読んでも自分の家庭に当てはめると分かりにくいことがあります。
そこで、配偶者の有無、子の人数、父母や兄弟姉妹の人数などを入力すると、一般的な法定相続分と遺留分の目安を確認できる簡易シミュレーターを用意しました。
「配偶者と子2人の場合はどうなるのか」「子がいない場合は父母と兄弟姉妹のどちらが相続人になるのか」「遺言で特定の1人に多く相続させると何が問題になりやすいのか」といった点を、イメージしながら確認できます。
遺産分割協議で揉めにくくするポイント
まず財産の全体像を整理する
話し合いがこじれる大きな原因の一つは、「そもそも何が遺産なのか」が曖昧なことです。預貯金、不動産、有価証券、保険、借入金などを一覧にして、全員が共通認識を持つことが大切です。
不動産は金額ベースでも考える
不動産は物理的にきれいに分けにくいため、「実家を誰が取得するか」で対立しやすい財産です。見た目の公平ではなく、評価額ベースでバランスを見ることが重要です。
感情論になる前に基準を共有する
最初から感情的な主張がぶつかると、協議が長引きやすくなります。法定相続分を一つの基準として確認し、そのうえで事情に応じて調整する流れにすると、話し合いを進めやすくなります。
まとまらない場合は調停も検討する
相続人同士の協議でまとまらない場合は、家庭裁判所の遺産分割調停を利用する方法があります。話し合いで解決できない場合に備え、早めに選択肢を把握しておくことも大切です。
遺産分割協議の分け方まとめ
遺産分割協議では、相続人全員で遺産の分け方を決めますが、必ずしも法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。
法定相続分は、法律上の基本的な目安です。一方、遺留分は、配偶者や子などの一定の相続人に保障された最低限の取り分であり、遺言や偏った分け方を考えるときに重要になります。
実際の遺産分割では、不動産の有無、相続人同士の関係、遺言の内容などによって判断が変わることがあります。そのため、まずは法定相続分と遺留分の基本を押さえたうえで、必要に応じて簡易シミュレーターも活用しながら、自分の家庭ではどうなるのかを整理することが大切です。
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